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新株予約権付社債については条文は設けられませんでしたから、どう考えるべきか問題が残っています。
新株予約権付社債が分離型の場合は、会社分割による承継を肯定して問題が少ないでしょうが、非分離型のときはできないとみるべきでしょう。
社債部分の払込金が発行会社にすでに払い込まれており、すでに払い込んだ金銭が新株の払込金になるしくみだからです。
株式交換のさいの完全子会社が発行している(非分離型)新株予約権付社債については、排除規定がある(352条第3項)ことがその根拠ということになるでしょう。
このほかに、承継ができるとしても、甲会社における新株予約権付社債の価額と乙会社における価額とは違うのではないか、このため、承継ができるにしても価額の調整手続きがいるのではないかという問題があります。
この点は、正直なところよくわかりません。
新設分割のときは、人的分割のときでも按分型であれば問題は起きないはずですが、非按分型なら問題が起きやすくなるはずです。
吸収分割のときは、人的按分であっても問題が起きやすいでしょう。
結局、実務的には、非分離型でも分離型でも、物的新設でないかぎり、消却してから進むのが望ましいといえます。
ここから、会社分割についての重要な法律問題に移ります。
会社分割によって、債務を甲会社に残し、資産だけを乙会社にもっていってしまうことができれば、乙会社は優良企業として出発できます。
ただし、債権者の了解が得られるのかという問題があるかもしれません。
これとは逆に、資産を甲会社に残し、負債をすべて乙会社にもっていってしまえば、甲会社は一度に優良会社に変身します。
ただし、これも債権者の了解が得られるかという問題があるかもしれません。
最大の債権者である銀行が不良債権の処理を急いでいるのですから、会社分割に承諾を与えないはずはないし、会社分割を使って負債だらけになった会社は破産か特別清算で消滅させてしまえば、あっという問に不良債権の処理は終わってしまうはず、と論理的にはいえます。
が、実際には、銀行としては不良債権をなんでもいいから処理すればいいわけではなく、可能なかぎり債権を回収したいのですから、簡単には了解してくれないでしょう。
しかし、債権者の了解が得られなければ債務者としてメリットのある会社分割ができないとすれば、会社分割という新たな法制度を作った意味がないではありませんか。
それでは、債権者が了解するはずがない乙会社への資産の移転や、負債の移転ができるのでしょうか。
それこそが問題です。
そして、この答えは「イエス」なのです。
債権者の同意なく資産や負債を乙会社に承継移転する方法は、新設分割であれば、「分割計画書」に記載して株主総会の承認を得ればいいし、吸収分割であれば、「分割契約害」に記載して、両方の会社の株主総会で承認を得ればいいのです。
両者とも、債権者が同意するか、同意しないかを債権者に質問し、その同意を得る手続きは不要です。
そして、新設分割の場合は、分割会社から新設会社に対する権利義務の承継は、「分割計画書ノ記載二従上」発生するのです(商法374条の10)。
吸収分割の場合は、分割会社からの権利義務の承継は、「分割契約書ノ記載二従上」発生するのです(374条の26)。
このいずれにも債権者の同意を要件としていません。
したがって、債権者の同意なく資産を承継移転し、負債を承継移転できるのです。
この一見不思議な法現象をくわしく検討するにあたり、まず初めにはっきりさせなければならない論点があります。
それは資産の移転については、だれの了解もいるはずがない、という点です。
資産ということは、法的には自分の権利ということですから、だれに相談する必要も、だれの了解も必要ありません。
資産(債権)を移転するのに、債務者の同意がいるわけがありません。
なぜなら、それが権利の定義なのですから(債権移転にともなう債務者の同意は対抗要件にしかすぎません)。
したがって、債権を移転させるのに債務者の同意がいるわけがありません。
会社分割法制のなかには、債務者の同意を必要とする規定はまったくありません。
こんな当たり前のことを間違えている会社分割の解説書をときどきみかけますから注意してください。
法律上、債権者の同意を要するのではないかということが問題となるのは、債務の移転についてです。
この点、経営者や税理士の方々のなかには、「債権者の同意なくして債務の移転ができるはずがない」と思い込んでいる人が実に多いようです。
しかし、債権者の同意なく債務が移転できるという法現象は、そんなにめずらしいことではありません。
会社の合併でも、相続でもできるではありませんか。
合併でも相続でも、正確には債権の移転ではなく包括承継です。
そして、会社分割では、債権者の同意なく債務が特定承継できるのです。
ちなみに、包括承継とは、あれこれ選択して承継するのではなく、あれもこれも全部ひっくるめて承継されるということで、特定承継とは選択したものだけを承継できるということです。
この点が理解できなければ会社分割は理解できないというほど重要な点です。
この点について、もう少しくわしくお話しします。
債権者保護手続きはなぜ必要か債権者の同意なく債務が移転できるとすれば、債権者はひどい目にあわされることになるではないか、と疑問に思われる向きもあるでしょう。
そのとおりです。
だからこそ、債権者の同意なく債務を移転する場合には、債権者がひどい目にあわないようにするために、債権者の保護手続きを必要とします。
つまり、債権者の同意なく債務を移転できるからこそ債権者保護が必要なのです。
この保護手続きとは、債権者一般に対する公告と知れたる債権者に対する催告です。
異議のある債権者に文句をいう機会を与えるわけです。
合併の場合の債権者保護手続きと同じ構造です。
商法では、100条に合名会社の合併について債権者保護手続きを規定し、会社法や有限会社法で合併とか清算とか、債権者に重大な不利益を与えかねない手続きをするさいに準用するという構造になっています。
このため、債権者保護手続きのことを「百条手続き」という呼び方をします。
会社分割も同様の取り扱いとなっています。
ところで、債権者の同意なく債務の移転ができるとしても、債権者に催告して、異議を唱える機会を与えれば、異議をいうに決まっているのだから、同意が必要だというのと大きな違いがないではないか、という税理士のみなさんの声が聞こえてきそうです。
しかし、大きな違いがあるのです。
会社分割では、公告も催告もしなくていい場合があるからです。
それはどういう場合かというと、会社分割前と会社分割後とで債権回収可能性が変わらない場合です。
具体的には、①会社分割の方法が物的分割であること②(債務が乙会社に移転する)会社分割後であっても、債権者は甲会社に対し、会社分割前と同様に債権の請求ができる場合。
この2つの要件は新設分割でも吸収分割でも同じです(374条の4第1項但し書き◎374条の20第2項)。
③分割によって新設される会社または営業を承継する会社に債務がまったく移転しない場合。
会社分割の方法が物的分割であれば、甲会社から乙会社に出ていった資産と負債の差である純資産にかわって、乙会社の新株が甲会社に割り当てられますから、純資産に変更がなく、したがって、債権者からみて財産は外部に流出していないからです。
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